Away hand

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ふらつく足取りで冷蔵庫から缶ビールを取り出す。 冷えたビールを喉に流し込むと気配を感じて振り返る。 「リカ…」 「お腹空いてない?何か作ってあげようか?」 「ああ、アレがいい…コロッケ。」 「ふふっ、コロッケってジャガイモがなきゃ作れないんだよ。」 「おう、なら買ってくるわ。」 ふらつきながら立ち上がるとグラリと身体が揺れた。 視界が歪み立っていることができない。 「リカ…目眩がする…」 振り返るとリカの胸にサバイバルナイフが突き刺さっている。 胸から大量の血を流して立っているリカ。 「痛いよ…カイ…」 「リカ!お、俺が…刺したのか?」 「そうだよ…穴が開いちゃった…」 口から血を吐き出すリカ。 「バイバイ…」 カイに背中を向けて消えて行くリカ。 「リカ!待って!リカーーーー!」 ハッとすると床に缶ビールが転がっている。 「…ははっ、ははは…」 頭を抱えて床に寝転がる。 「ぅうぁあああああーーー!!」 奇声をあげてのたうち回るカイ。 「リカ…」 幻覚と幻聴の波にもがき苦しみ、やがて眠りにつく。 カイが目を覚ましたのは名古屋から戻って三日目の朝だった。 「うっ…」 強烈な頭痛と吐き気に襲われる。 吐きたくても胃が空っぽで吐くことさえ出来ない。 床に転がる缶ビールに口をつける。 「…ごぼっ、ぅっ…」 吐き出した山吹色の液体。 喉に焼けるような強烈な痛み。 「はぁ…はぁ…」 玄関から物音がして誰かが駆け寄ってくる。 「カイさん!」 ビニール袋のガサガサとした音が聞こえた。 「カイさん、水飲んで!」 無理矢理口に押しつけられたペットボトルから冷たい水が喉に流される。 喉を通るヒンヤリとしたさらさらの水が身体中に行き渡る。 意識がハッキリするとエイジを睨む。 「なんで…助けた!」 「本気で死にたかったんすか!あんた、それでいいのかよ!」 「お前には関係ないだろ…」 「リカちゃんが…意識を取り戻したって!テレビで言ってたんすよ!それでもあんた死ねんのかよ!」
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