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拘置所に収監されたカイは覚醒剤の副作用と戦っていた。
精神崩壊寸前のカイを見兼ねて精神科に連れて行く刑務官。
げっそりと痩せ細ったカイを見つめる医師。
「…蒼井カイトさんですね。」
「はい…」
「覚醒剤使用で自首されたそうですが…自首される前は頻繁に覚醒剤を使用されましたか?」
「いいえ…。」
「どんな時に覚醒剤の使用をしましたか?」
ゆっくりと顔を上げるカイ。
「苦しくて、辛いときに…」
「苦しくて辛い時とは…どんな時ですか?」
「俺は…」
カイはゆっくりと自分の生い立ちから、幼少時に両親を焼き殺したこと、その後の人生を医師に語った。
「先生…俺、強くなりたい。薬にも頼らず、誰も傷つけない強い精神力が欲しい。」
「…薬に頼らないことはとても大切なことです。蒼井さんがもう二度と薬には手を出さないと誓うなら、これからの人生を歩んでいくお手伝いはさせて頂きます。ですが…誰も傷つけない強い精神力…というのは難しいですね。そんな精神力があるなら、私も欲しいです。貴方が言う、自分のせいで不幸にしてしまうとか、こんな自分では傷つけてしまうという考え方を変えることは出来るかもしれません。」
医師はまっすぐカイと向き合う。
「貴方の性格を1から作り直すことは無理に等しいですが、いろいろな考え方を身につければ、ネガティヴな思考はその中の1種類だと思って考えれば心にゆとりができます。世の中は全てが悪い方向に向く訳ではないのです。わかりますか?」
「……」
「蒼井さんが出会った女性…その方に初めて出会った時、何を感じましたか?その方が会いに来た時にどう思いましたか?」
「…なんだか変な気分になった。」
「変な気分とは…気持ち悪いとかイライラしたり、不快だったということですか?」
首を振るカイ。
「言葉に…するのは難しい…。」
「そうですか。では、彼女に出会ったことを後悔していますか?」
「…傷つけたり、苦しめたりしてると思うと後悔した。けど…今は少し違う。」
医師はカイの言葉を待った。
「今は…強くなって、そばにいてやりたいと思う。」
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