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東京で一人暮らしを始めたリカ。
桜並木の下、空を見上げる。
「雨…降りそうだな。」
上を向く顔に桜の花弁が舞ってきた。
「雨降ったら散っちゃうだろうな…」
「ん?何?」
「桜…」
「あぁ、もう最後だろうね…」
一緒に歩く大学の友人と桜の木を見上げる。
「寂しいね…」
「でも今度は夏が来るよー!」
「ふふっ、そうだね。」
「リカって彼氏いないんだよね?」
「うん、いないよ。」
「なんでかな…モテそうなのに。」
そっと腕に残る火傷の跡に触れた。
「…怖いんだよね…なんか。」
「えっ?!なんで?」
「ふふっ、わかんない。」
「男性恐怖症?えっ、もしかして…こっち?」
掌を外側に向けて顔に添える郁子の顔に驚く。
「え…オカマ?」
「あ、違うこっち?」
手を反対側に向けて興味津々でリカの顔を覗き込む郁子。
「あはははは、どっちもオカマポーズじゃん。」
「もーっ、わかるでしょ?女子の方が好きかって聞いてるのー!」
「そんなこと、考えたことないよ。」
「つか、中学ん時も高校ん時も彼氏いなかったんでしょ?信じらんない。えっ!じゃあまだ処女?!」
「ちょっと!!」
顔を真っ赤に染めて郁子を睨む。
「天然記念物~っ!」
「失礼過ぎる~っ!」
笑いながら部屋の鍵を開ける。
「どうぞ。」
「お邪魔しま~す。わ~!部屋綺麗だね~!」
「うん、まだ新しいからね。」
「ふーん、高そうだなー。月いくら?」
「96,000円…」
「高っ!何、親が全部出してくれるの?」
「まさか…全部じゃないよ。ちゃんとバイトもしてるし。」
「リカん家お金持ちでしょ。」
「全然そんな事ないよー!」
「名古屋のお嬢様だもんなー。羨ましい~。」
「もーっ、だから違うって!」
コーヒーメーカーのスイッチを押すとマグカップを二つ食器棚から取り出す。
「そういえばリカって前に東京に住んでたって言ったっけ?」
「うん…。」
「でも…記憶ないんだっけ?」
「……」
「ごめん、嫌なこと聞いたかな?」
「ん~ん、大丈夫。」
「記憶がないのって…何年位って言ったっけ?」
「13年位…」
「小っちゃい時のことは覚えてるの?」
「うん…。」
「そっか…。想像もつかないな…。」
ゴボゴボと鳴り出すコーヒーメーカーを見つめる。
「でもさ、いつか思い出すよ!」
「そうだね…」
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