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さっきの事が頭から離れず、バイト先でミスをして叱られた。
とぼとぼと歩きながらも、心の中は複雑で頭がおかしくなりそうだった。
ふと足を止める。
聴いたことのある曲が雑貨屋さんから流れる。
なんだっけ…この曲。
店内は甘いお香の香りが漂っている。
次の曲も聴いたことがあるような気がする。
…どうしてだろう…。
レジが置かれたカウンターで本のページを捲る店員を見つめた。
心臓がまた高鳴る。
手元にあった小物入れを掴むとカウンターに置く。
店員は顔を上げるとにこやかに微笑む。
「ありがとうございます。700円です。」
「あの…」
「贈り物ですか?」
「いえ…今流れてる曲って…CDですか?」
目を大きく見開くと微笑む店員。
「はい。cBaのCDですよ。」
「cBa…」
「解散しちゃったんですけどね…」
CDケースを見せてくれる店員。
「これ…」
同じ物に見覚えがある。
まったく記憶にない物の段ボールの中にあったCDだ。
「cBa好きなの?」
「いえ…」
小物入れを袋に入れて差し出される。
「ありがとうございました、また来てね。」
店を出て歩き出すけど、段々と走り出す私の足。
部屋の中であの段ボールを探す。
記憶を失ってから揃えた物や元々使っていた物ならすぐに手に馴染み、なんの違和感もなかった。
でも、あの箱に入っているCDやTシャツに対しては他人の物の様な違和感があった。
クローゼットを開けると奥の方に仕舞ってある段ボールを見つけた。
「あった…」
箱の中にはCDとクリアファイル、そのバンドのTシャツらしき物が入っている。
さっきの店でみせてもらったCDと同じCDをパソコンに入れる。
「外国人…かな…」
流れる英詞に耳を傾ける。
暫く聴いていると頬に涙が零れた。
「なに…これ…」
自分の涙に驚き頬に触れる。
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