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大学を卒業して社会人になっても、私と麻衣のお付き合いは続いていた。
私と麻衣は、東京都内の会社に就職した。
私は、コンピュータ関係の会社、麻衣は旅行社に勤めていたが、どちらの会社も山手線内だったため、会社帰りに比較的容易に会うことができた。
私は、会社には普通の男性として勤務していた。
25歳になった私は、年齢的にもそろそろ落ち着かなければならないと思っていた。
私は、麻衣との関係を、これからどのようにしたらいいのか、悩むようになっていた。
私は、麻衣のことを異性として見ることができないのに、それを知りながら麻衣はいつも私を支え続けてくれた。
だから私は、麻衣の反対を押し切って女性になる夢を果たすのか、それとも麻衣の反対に従って男性として麻衣との関係を継続するのか、とても迷っていた。
麻衣は、口には出さないけれど、私に男性に戻ってほしいと願っているはずだ。
私は、女性になる夢を果たすと、自分自身にとって何か良いことがあるのだろうかと考えることにした。
女性になる夢を果たすと、たぶん私は、大切な麻衣を失うことになるだろうと思っていた。
麻衣と一緒にいる時間は楽しくて、私は、麻衣からたくさん元気をもらっている。
それに麻衣は、中学の頃からいつも私のことを心配し、また、私の気持ちをとても良く理解してくれる、私にとっては、なくてはならない大切な存在だとわかっている。
こんなにも私のことを想って、私のことを助けてくれる存在は、世界中探しても麻衣だけだろうと感じていた。
だから私は、自分の夢を果たすことよりも、麻衣という大切な人を失うことのほうが、よほど辛いことだろうと感じていた。
私は、少しずつ女装する機会を減らしていった。
このことは、私にとって、とても辛いことだった。
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