第1章

4/4
前へ
/4ページ
次へ
5年の月日が経った春の事です。 私は32歳になりました。赤い電車に揺られて会社に行き、疲れて帰ってくる。そんな毎日の繰り返し。珍しく、横浜でちょうど前の席が空いた。そこに腰掛ける。激務が続き、疲労困憊だったこの頃。私は爆睡してしまった。上大岡で降りるはずだったのに…気が付けば三浦海岸にいた。早く上りの電車に乗り直さなきゃと思ってもみましたが、ふと5年前にお別れしたひーくんの言っていた言葉を思い出した「かわうそと握手したいな」そういえば…昔、赤い電車に一緒に乗っていた時、油壺マリンパークでかわうそと握手出来るってチラシが貼ってありました。あの時は行かなかったけど、せっかく三浦に来たんだし…そーいえば今日は5月6日。忘れかけてた記念日。とりあえず1人で行ってみようと思った。てくてく1人で油壺マリンパークへ向かう。行ってはみたものの仕事終わりでこの時間…22時は軽くまわっている。開いているわけがない。帰ろうと思った時、「今度、一緒に行きませんか?」何か聞いた事のある声がした。そこにはひーくんが立っていた。「え、なんでいるのよ、仕事は?長崎にいるはずでしょ?なんで?」若干パニック状態の私。「辞めた。帰ってきたんだ。今日5月6日だろ?ゆうとかわうそと握手してないし。一緒に行ってくれる相手もいないし」「また別日に来ようか、かわうその所」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加