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君は、空に昇った。
俺は君をなくしたんだ。
それは変えようの無い事実だった。
昨日、あの後
君は両親に連れられて家に帰った。
君の両親は俺に「寄っていくか」と言ったけれど、俺は「また明日、お邪魔します」と断った。
そうして少しだけ、君の病室から見えていた公園で時間を潰してから、再び君の居なくなった病室を訪ねた。
そこは、もうすっかり片付けられていて、君が居た事実は跡形も無く消え去っていた。
君の言葉が響く。
『起こっている事の全ては事実であるけれど、それが自然だとは限らない。事実の裏側を見て。人間は、人間以外の生き物の生死は自然だと言うけれど、人間の生死には事実を曇らせる。その不自然さに気づける眼と心を持って』
俺は、俺の心が見せた幻の雨雲を思い出した。
思い出したくも無い雨雲。
その雨雲を思い出さなくなった時、俺は君の言葉の真意も失う。
俺は、君を失った。
けれど、君の本当の心を得た。
『物事の真意は、自分の眼と心で視て』
そう言った君の心。
END
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