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その日は見渡す限り青空で。
普通こんな日は、どしゃ降りだったり曇っていたりするんじゃないのかって、そう思った。
そんなのは所詮、物語の中の出来事なんだ。
俺と君に何が起きようと、晴れの日は晴れているし、雨の日は雨で。
天気は、そこに存在する生き物の事なんてお構いなしに、晴れの日と雨の日を繰り返す。
( だってそうだろう? )
テレビのドキュメンタリー番組で、シマウマがライオンに襲われたって、コメンテーターは「自然の摂理」とか言うんだ。
シマウマの感情なんて、どこかに追いやられて「このシマウマ一頭で、腹を空かせた親子ライオンが生き延びられる」ってね。
その日が晴れていようが、曇っていようが関係ないんだ。
もっと言えば、そのシマウマに親がいようが子供がいようが関係ない。
そもそもシマウマに感情があるかは知らないけれど。
青だけの空を見上げた後、真っ白いベッドに横たわる君に目線を移した。
なんとなく冷めた気持ちでその番組を観ていた、あの日を思い出した。
あの日、俺の隣に居た君は、もういない。
さっきまで、そこに確かに存在していたのに、君はもういない。
「10分でいいので、二人きりにしてもらえませんか」
俺は君の身体に泣いてすがる人々にそう言った。
そこには君の両親や友人も居た。
けれど、10分だけ、最後に君と二人きりになりたかった。
君に伝えたい事があったから。
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