桜の前

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思ったよりも時間がかかってしまい、校舎を出ると少し薄暗くなり始めていた。でも冬に比べてだいぶ日は長くなってきた。 そんなことを思っているとスポーツバックを持った部活終わりの集団がグランドの方からやってくるのが見えた。その数人で固まって歩いている中に歩を見つけた。 歩はこちらに気付くと一緒にいたチームメイトに手を振りながら小走りでやってきた。 「今日遅いじゃん。どしたの?」 「担任から雑用頼まれてさー。すっかり遅くなっちゃったよ。」 「ついてねーな」 「ほんとだよ。」 そんな事を言いながら二人で歩き出す。 「そういや、部活の仲間と帰るんじゃなかったの?」 「いや、あいつらチャリだから。」 いーの、いーのと手を横に振りながら歩が答える。 「お前と帰るのひさしぶりだなー。あ、一週間位前に帰ったな、そういや。」 「そうだね。クラス別になっちゃったもんな。隣だけど。」 今更ながら元気か?なんて冗談ぽく言ってくる。 いつもの桜並木に差し掛かる。桜はもう散りかけて葉桜となっている。気付くと歩が足を止めて桜の木に目をやっている。一年前に見たのと同じ、あの顔をしていた。
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