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「あのさ、お前は自分以外の何かになりたいって思ったことある?」
「へっ?」
やけに真剣な顔で今までの話とは全然違う話題をいきなり投げかけられ、思わずおかしな返事をしてしまう。自分以外の何か?もっとかっこいいやつだったら、とか頭のいいやつだったら、みたいなことだろうか?
「まぁ、あるっちゃあるけどさ、例えばテレビに出てる芸能人になれたらなーみたいなこと?」
俺がそう言うと真剣な表情だった歩が少し笑って、まぁちょっと違うけどだいたいそんな感じ、と答えた。
「俺はさ、アレ。」
「アレ?」
そう言いながら歩が「アレ」と指を指す方向を見るといつも通る桜並木の桜がある。クエスチョンマークだらけの俺に、歩はまた真剣な顔で言う。
「俺はあの桜の木になりたい。もし生まれ変わるとしたら、今度は人間以外のものがいい。」
「は?桜?人間以外?」
何が何やらわけがわからず歩を見ると、昨日と同じ遠くを見るようなあの表情をしていた。
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