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…平凡な日常。それは退屈なもので…そして何にも代えがたい大切なものだ。
ただ過ごしていたんじゃ気づかなかったが、平凡こそ何よりの宝なのだ。
おれ、石失 輝彦(せきしつ てるひこ)は16年という短い人生にして、一種の悟りを開くことになった。
それは何故か?その理由は目の前にいるこの…
「お願いします!魂狩らせてください!何でもしますから!」
「嫌だ」
目の前で、日本人もびっくり見事な土下座を決めている女のせいだ。その行為は何とも潔く、そして健気なものだが、その台詞は物騒極まりない。
「お願いですよぅ…」
「目に涙を溜めてもダメだ」
かれこれ10分、このやり取りが続いている。そもそも、何でこんなことになったのか…おれは今日の行いを振り返る。
…うん、何も悪いことはしていない。むしろ悪いのはこの女。だのにこの仕打ち…神様よ、おれに何か恨みでもあるんですか。
目の前で泣きながら土下座し、魂を狩らせてくれという女…こんなシュールな状況に陥った経緯を説明するには、少々時間を遡らなければなるまい。
…はあ、やれやれまったく…
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