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「逢坂君また猫に構ってたの?」
HR終了後、担任に呼ばれているにも関わらず彼はクラスの女子に捕まっていた。
「塀の上で寒そうにしてたから放っておけなくてさ」
その言葉に数人の女子が、優しいだの動物思いだの呟いていた。
「所詮目立ちたいだけの癖に」
私がそう呟いたその時、偶然にも彼と目が合ってしまった。
居心地が悪くなった私はすぐ視線を逸らし、静かに教室を後にした。
その日の放課後。
私は委員会の帰りで、若干遅くまで残っていた。
教室に戻ると、外の暗さに反し中は明かりがついていて、例の彼が気持ち良さそうに目を瞑っていた。
ほんの好奇心だった。
私は彼の近くへ寄って彼を見つめた。
ー無駄に綺麗な顔しているんだよなあー
そう思って、彼の無造作にかかった前髪を直そうと手を掛けようとしたその時だった。
「安藤さん、今何時?」
今まで起きていたのか、今起きたのか分からない程自然に話しかけてきた彼に私は動揺したと同時にいたたまれなくなった。
逃げよう、そう決意して後ずさったその時、
「待ってよ」
そう言って彼は私の腕を引き寄せた。
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