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「なるほど。中々の教師ぶりだな」
「……ははは、学校にも行けない教師なんて必要ないじゃないか」
彼は自虐的に笑って静かにペンを置くと、一つ欠伸をして伸びをした。
「ボクが居なくても世界は回るんだ。だけど、この時代はもう少しで終わる」
「そうだな。お前の学力を必要とする人間は現代社会に必ず存在するだろう」
「違うよ。そういう話じゃない。あと少しでジハードが起こるんだ」
「ジハード?」
「聖戦。ボクらに幸福をもたらす為の人種選別だ。今の社会の仕組みは変わって沢山の人が死ぬ事になる」
「……電子宗教に染まったな?」
電子宗教。又の名をサイバー・カルト。一般的にインターネット上の過激思想家が結集して立ち上げる宗教団体を指す。
引きこもり人口は既に日本国民の三割に達した。彼らのライフスタイルは非常に多様だ。
内職や創作活動によって仮想通貨を稼ぐ者、社会復帰の為のコミュニティに参加する者。
そして。
気が触れてしまう者。死を選ぶ者。インターネット上に邪教を立ちあげる者。邪な教えに染まる者。
きっと眼前の彼は曲がりくねった宗教の教えにとりつかれているのだろう。
「何とでも言いなよ。ボクは社会的多数者に虐げられる少数派を救済する。邪悪な十人を殺して親愛なる一人だけを生かすんだ」
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