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彼の瞳に光が灯る。歪な希望に縋りつく人間の空虚な笑顔だった。
「『孤なる者には寄り添い、時に救うべし』。それがボクの行動原理さ」
「その思想……政府非常事態宣言を発令させた『孤なる先導者』のものだ。つくづく指折りの危険団体だな」
「キミは孤独かい?」
「ここで『孤独ではない』と答えれば俺はどうなる」
「死んでもらうよ。理想の世界を作るためだ。脅しでも嘘でもなく、ボクは本当に武器を持ってる」
「お前と同じく俺も孤独だ。敵ではない筈」
「そっか」
彼は右腕を伸ばして俺の手を取った。
「……何のつもりだ」
「『孤なる先導者』ではこうして孤独を満たし合うんだ。握手は友情の証だよ」
男に手を取られるのは奇妙な感覚だった。しかしこの少年は見ようによっては少女にも見える。
柔らかく、温かい。
まるで優しく包み込むような手はたまらなく心地良かった。
少年はにこりと笑んだ。先ほどの仏頂面が嘘のような、ひどく幼気な笑顔だ。
やがて彼ははっとしたように、照れを噛み殺すように口を結んだ。ひどくばつが悪そうに顔を背ける。
「課題、あとは自分で解けるだろ。ボクだって暇じゃないんだから」
「あ、ああ。世話になったな。今日は帰る」
「……また来るかい?」
「多分な。行くとも」
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