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思うに、私ことヴォレーヌスの苦労を理解してくれる御人は世の中にそうそういないのではないかと思われる。
「ヴォリィ、何してるの。早くしなさい」
「ええ、もちろんです王女様」
棒読みも甚だしいと自分で理解していても、心からの応対などできるはずもなかった。国一番の剣と魔法の使い手として王族の護衛任務についてみれば、実情はただの“おもり”だったわけで。
しかも困ったことに、『自分よりも強い人間』のおもりとなれば、私の、このやり場のない気持ちも少しは察していただけると思う。
「ぐずぐずしてると吹っ飛ばすわよ」
「急ぐので勘弁願います」
私の思うことは、今も昔も変わらない。
ああ、無常。たった、それだけ――
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