マジキチと呼ばれた男

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「雪が降って来たよ!」  と、子供の声がした。空から真っ白な雪が舞い降りている。  そこで、僕は思い出した。今が真冬であることを。  自分が……海パン一丁であることを。  風が吹いた。人々は身をちぢこませた。  僕はわめいた。 「んっほぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!??? さむいにょぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」  そして大きなクシャミ。マフラーと手袋がない僕は素っ裸も同然。全身びしょ濡れなのも相まって体感温度は南極大陸に匹敵している。たぶん。 「……はい」  すると恋人は自分のコートの裏からカイロをはがし、僕のおなかに貼ってくれた。じんわりとした恋人のやさしい温もりが肌に伝わってきた。 「どう、あったかい?」 「わあ……すごくあったかいや」  恋人は「よかった」と言う代わりに微笑んだ。  僕らを取り囲んでいた人はそれぞれ思い思いのところへ散っていった。  リュックの中にしまってあった防寒具を再び身に着け、僕は彼女と手をつなぐ。 「もう大丈夫。これで安心だ」 「本当に? 大会前に風邪ひかないでね」 「絶対ひかないさ。大会のための格好なんだから」 「そんなに本気なんだ、優勝するの」 「君との約束だもの。絶対に、賞品の旅行券は勝ち取ってみせる!」 「じゃあ期待してるね、おバカさん」 「あっ、誰がおバカさんだ」 「おバカさんだからおバカさんなんだよ~だ!」 「おバカ……?」  そのとき、僕の頭に雷が落ちたようなひらめきが起こった。 「あれ? ……もしかして怒ちゃった?」  ピンと来てしまった。すべてが納得いったのだ。
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