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彼の潤んだ裸眼が
目の前にあって、
今はこのほかに
見ていいものがあるとは
思えず真っすぐに
見つめる。
「だから……
わかって、ください」
「瑞島さん……」
「僕はあなたに
キスしたいために、
抱きたいために
言うんじゃないんです。
案外難しいんですよ」
「そんなややこしいこと……」
「女性は感情のままいられるから、
うらやましいです。
盛り上がったから、
ねだられたから──
そんなことでする告白に、
なんの意味があるんですか」
「ま、まじめ……」
「言ったでしょう。
なにかを違えることを……」
「もう、いいです。
私だって好きです。
好きです、瑞島さん」
今度は私が、
桃さまの唇をふさいだ。
うるさいのはどっちよ、
と無駄に怒ってしまう前に。
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