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だって、
浦川さんとちゃんと
顔を合わせて、
言葉を交わすのは
まだ二度目だ。
そんな相手に
話すことなんて、
たかが知れている。
……けど、この人
上司なんだよなぁ。
なんでここまで
浦川さんから
逃げたいと思うのか、
自分でも疑問に思った。
たった二度で
“杏ちゃん”と呼んでくる
気やすさとか、
まあそのあたりの
距離感の相違だとは
思うけれど。
「お話、
うかがいますよ。
私はここでけっこうです」
座っている
浦川さんの正面──
ただし灰皿を挟んで、
にこりと微笑み返す。
浦川さんは
しばらく私を
見上げてから、
ふっと眉尻を下げた。
「ガード、固っ」
言いながら、
浦川さんは
短くなった煙草を
灰皿に放り込む。
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