生はまこと不義に尽きる

7/40

513人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
  「そういうのでは、 ないです」 「まあまあ、 この間も言ったでしょ。 桃の女に 興味なんかないよ、俺」 後半の声が少しかすれて、 そうだこの人は 若く見えるけれど けっこうおじさんだ、 ということを思い出した。 とっさのおしゃべりに 疲れを隠せない 程度には。 浦川さんは喉の奥で 「んん」と 軽く咳ばらいをし、 煙草に火を点け直す。 「桃がさあ」 「……」 「やたら、楽しそうでね。 いや、顔はあの 無表情のままなんだけど」 「無表情で楽しそうとか、 わかるものなんですか?」 「俺と桃の仲だからねー」 なんとも微妙なことを 言いながら、 浦川さんこそ 楽しげに煙を吐き出した。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

513人が本棚に入れています
本棚に追加