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「学校の先生です」
「センコ―だと?ざけたことぬかしやがって、てめえ!」
男の指が麗奈の太腿の付けのあたりを、いやらしくまさぐった。過敏な神経が集中する内腿の奥部だった。
「痛い!」
麗奈はごつい手から身をよじって逃れようとしたが、あっさりと抑えつけられた。
「やめとけ!伍長」
運転席の大久保が命令した。
「着きましたよ、お嬢さん。彼らは、制御が難しいのです」」
運転席の大久保がにやにやしながら振り向いた。
「この女は俺が連れて行く。お前たちは待機してろ」
「はい。ミスタ・大久保」
内腿を這う手の動きが止まった。
二人の男が女の体から離れた。
二人の男はベレー帽をかぶりなおした。女を嬲るときの卑猥な表情は消えて、もっと闘争的な顔に変わっていた。
「通称、ブラックベレー。サディストでタフでな傭兵です。あまり怒らせない方がいいですよ。指の爪をそいだり、かわいい唇に針を刺したり、電流責めしたり。いうなれば、拷問のエキスパート。まあ、そういう連中です」
大久保は、胸糞が悪くなる様な講義を得意満面に続けた。
「この間は、22歳の女性が左目に注射針を打たれてました。失明したのかな」
大久保は残忍な描写を面白がっていた。麗奈が恐怖ですくむのを楽しんでいるのだ。
彼女はうんざりした表情を浮かべた。だがその眸は油断なく周囲に注がれていた。大久保のあとをうつむき加減に歩きながら、目印になりそうな物、そう、植え込みの位置、建物のおよその高さや窓の大きさなどを記憶にとどめていく。
二人の凶暴なサディストはエントランスホールまでいっしょだった。
殺伐としたホールはあいかわらず無人だった。ホールを中央にして、通路は左右に分岐していた。大久保は右側へ、傭兵どもは左側へと分かれた。
「先週の土曜日と同じ診察Fへ行って下さい。きょうは、服を脱がなくてもけっこうですよ。あの時は抵抗感があったでしょう。お察します」
先頭を歩く大久保が、いたわりなど微塵も感じない口調で言った。
麗奈は答えなかった。
「まあ、スマホロイドになれば、その素晴らしさに圧倒されて、不愉快な思いなどすぐ忘れますよ」
ロッカー室の横を通り過ぎたが、大久保は何も言わなかった。
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