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「黒22番・梶山雄一は25歳は、赤16番・柳下麗奈との対戦を望むか」
低い男の声がどこからともなく響いた。
「いいえ」
若い男の躊躇のない即答があった。
麗奈は固定された顔をかすかに横に向けた。麗奈の顔に畏怖と悲しみの感情があふれていた。
「それがどういう意味なのか、理解しているか」
抑揚のない低い声が壁伝いに届いた。
「はい。僕は麗奈との戦いを望みません」
「よろしい。意志は固いようだ。このような事態になった時のことを考えていたか?」
「はい」
「・・・・。よろしい。去勢を許可する」
静かになった。
カメラレンズがフェードアウトしていく。
「柳下麗奈と梶山雄一は退室を。二日間の休息を与える。最後の晩餐会を楽しむがよい」
麗奈たちを拘束していたX字型ストレッチャーは可動式だった。
二人は仰臥状態のまま、自動搬出された。あたかも軌道が敷設されているかのように、滑らかに運ばれていく。
視界に映るのは、迷路のようにうねる灰色の天井だけだった。ストレッチャーが動いている間、二人は無言だった。
停止の震動が伝わった。
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