26人が本棚に入れています
本棚に追加
「雄ちゃんと口論、したくない」
麗奈は身をのりだして、雄一を制した。
「何か飲まない?」
「そうだな。ひといき入れようか」
雄一は空漠とした眼差しで、麗奈と向かいあった。麗奈の瞳孔にくっきりと浮かぶのは、心底からの恐怖だった。
「麗奈、怖がらなくていい。僕は何もしないから」
雄一はサイドボードに組み込まれている冷蔵庫に歩み寄った。
清涼飲料水のペットボトルを2本用意して蓋をあけた。
「2日間の休息は誰もじゃましに来ない。そういう約束だ」
雄一はよく冷えた飲料の一つを麗奈に手渡した。
「それって、雄ちゃんが去勢するかどうかの猶予でしょ。まだ間に合うわ」
「おれの決心は固い。君とは戦わない」
「じゃ、わたしは誰と戦うの?」
「おれじゃない、誰かとだ」
「押し問答ね。それじゃ、こうしましょ」
麗奈はペットボトルの中身をひとくち飲むと、羽織っていたバスローブを肩から静かに落としていった。
やわらかなローブはふわりと床に広がった。
白いまろやかな肉体に、雄一の視線が釘づけになった。
「あなたはあそこで、わたしと戦うのよ」
麗奈はなめかしい眼差しで、メイクされたベッドを眺めた。彼女は雄一の前まで来ると、立ち止り、彼のバスローブに手をかけて、ゆっくりと脱がしはじめた。
麗奈は全裸になった男の胸に、桃色の舌を這わせた。彼女はひざまずき、桃色の舌をさらに下方へ移動させていった。
男のそれは天空を仰ぎ、麗奈を受け入れようとしていた。
クリームのようになめらかな白い肩に、男の手の手が触れると、麗奈はそれを唇に含んだ。蜜よりも甘い愛撫は、無限の悦楽を予感させた。
二つの肉体は絡み合う樹木のように、ベッドに倒れこんだ。
時間が過ぎ、夕刻の日が斜めに差し込んできても、儀式は終わることなく続いた。
最初のコメントを投稿しよう!