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別室。
監視ルーム。机と椅子だけの狭い部屋。
椅子には30代くらいの黒いスーツの男。
そして壁際には、ブラックベレー帽のごつい男が直立不動で待機していた。
浅黒い肌、酷薄な眼付。
「官能に溺れている・・・」
黒スーツの男がモニタを見つめながら苦笑いを浮かべた。
「スマホロイド同士のセックスは、快楽のみの追求か。まあ、梶山にしてみれば最後の晩餐だからな。せいぜい楽しむがよかろう」
モニタ画像は録画中のサインが明滅中である。
「梶山雄一は公開オペ。これはマニアックな客が喜ぶな。柳下麗奈には別の対戦相手を。そうだな、黒22番の黒崎隼鷹がよかろう」
大久保はモニタから離れると、直立不動の男に近寄った。
「録画ビデオはスマホロイドのバイヤーたちに配信しろ。男の体内数値変化と女の体内数値変化のデータも忘れずにな。セクシャルロイドの参考になるだろうから」
「セックスライフもコンピュータを抱く時代ですか。俺は生身の女がいい。あの柳下麗奈ってのはいいタマだ」
ブラックベレーの男が、モニタの画像にあごをしゃくった。
「確かにいい女だ。だが彼女は商品、手を出すなよ。6号みたいになりたくないだろ」
「6号? ああ、あいつはドジ踏みやがった。麗奈をそこらの小娘だと思って、油断して、あのザマだ。みっともねえ」
「そのかわり、あの梶山が金抜きにされる」
大久保はあっさりと流した。
「女の見てる前でされるのか。おもしれえな」
ブラックベレーはサディスティックな笑みを浮かべた。
「そんなことより、柳下麗奈は要注意だ。眼を離すな」
大久保はモニタのスイッチを切り替えた。
ルーレット男爵の野球帽が画面に広がった。
「ミスタ・大久保。御用ですかな」
男爵はぐいと帽子を上げた。黄色く濁った眼が大久保を睨みつける。
「男爵殿。柳下麗奈の対戦相手のコンディションはどんな具合だ?」
「すこぶるよろしい。黒22番の黒崎隼鷹」
嗤っているのか、ルーレット男爵の表情が動いた。
「黒崎はナイフの使い手。柳下麗奈は何が得意技ですかな、ミスタ・大久保」
「彼女は戦闘よりセクシャルロイド向きだな。彼女が負けたら、そっち方面だ。バイヤーがいい値で買ってくれるだろう」
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