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私の趣味は何かって?
それは、本を読む事だ。
うん?普通じゃないかって?
それはどうだろう。
私が読んでいるのは、たった一冊の本だ。
しかもまだ読み終えていない。
いや、終わることはないだろう。
この天に星が在り続く限りは。
これは、全ての星の真実が記された本だ。
信じられないだろうが、これは作られたものではない。
とはいえ、事細かに書かれている訳ではない。
辞書のように解りやすく簡潔に記されている。
それは自動的に記憶され、ページは日々増えるため終わりがないのだ。
しかも私はその本を少し読んでは閉じて、文章を書き始める。
そしてそれは次第に物語となり、本となって私の書棚に並ぶのだ。
短いものから長いものまで実に様々である。
何処か似ている物語でも、同じものは一つもない。
そんな私の書棚の本を読みに、此処を訪れる者達がいる。
様々な星の、様々な存在。
姿形も様々だ。
手がある者も在れば、羽がある者も在る。
足がない者も在れば、角がない者も在る。
そして此処に訪れる全ての存在は、透明な姿なのだ。
幽霊なんじゃないかって?
いいや。これこそが実体なのだ。
魂と言う本当の姿。
皆、それぞれに此処でいろんな事を知り、新たな事をわかってゆく。
それがまた様々な形となって現されてゆくのだ。
ふと、足を止めると、書棚のすみっこで少年と少女が二人で一冊の本を読んでいた。
そして何かを思いついたように少女が鉛筆で絵を描き、その絵に少年が色を着けていた。
「楽しいかい?」
「うん!だってここにはたくさん本があるし、ひどい声もしないから。」
少年はそう言った。
「ここは人も場所も優しいから。それにここだと二人で一緒にいられるし。」
と、少女は笑った。
「そうかい。それは良かった。」
私は、この二人に興味を持った。
そして、手を差し出す。
「君達の事を教えてもらえるかい?」
すると二人は笑顔でその手に応えた。
繋がれた手からコードを読み取る。
どうやら同じ星の子達のようだ。
年の離れた大人の少年と大人の少女。
しかもまだ出逢えていないようだ。
互いに環境も境遇も違う。
「此処は好きかい?」
「うん!」
「とっても!」
二人は優しく笑った。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。」
私は二人に微笑んだ。
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