そして、僕はヒーローをやめた。

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隣の家で同じ年に生まれたアオイと俺は、必然的に幼馴染という関係になり、小さい頃からずっと一緒だった。 親同士も仲が良く、お互いの家族で遊びに行ったり、家を行き来したりしていた。 「ねえ、シュウヤ! ヒーローってかっこいいんだよ!」 小学校低学年の頃、いきなりアオイが戦隊モノのテレビ番組にハマり、その番組がある日は朝からわざわざ俺の部屋に来ていた。 どちらかというと、こういった類いのものは男の俺がハマるものだと思うが、俺はそれ程興味がなかった。 逆にその後にやっている女の子が変身して戦うやつの方が面白く思っていた。 だって何か可愛いかったし。 両親も「普通逆でしょ! あんた達ふたりとも変ねぇ」と言って笑っていた。 「かっこいいなぁ~~!」 瞳をキラキラと輝かせて戦隊モノを見るアオイは楽しそうで、俺はアオイに喜んで欲しくて変身のポーズをひとり隠れて練習したりしていた。 それをアオイの前で披露するとアオイはテレビを見ているときと同じように瞳を輝かせて俺を見た。 「わたしにも、守ってくれるヒーローがいるかなぁ?」 「え?? あんな強いやつなんてなかなかいねーよ!」 「……じゃあ、わたしにはヒーローいないんだ」 ガキのくせに現実的な返事をした俺の言葉にアオイは落ち込む。 そんはアオイを見て俺は焦り 「も、もういるだろ!」 と言い、渾身の変身ポーズをアオイに披露した。 「俺が、ヒーローになる!」 そう言った俺を、アオイはぽかんと口をあけたままの間抜け面で見つめた。 やっちゃった感があり恥ずかしくなったが、その後すぐにアオイは今まで見た中でいちばんの笑顔になった。 俺の方が照れくさいはずなのに、アオイも照れくさそうに笑っていた。 小さい頃の話なのに、そのアオイの笑顔を鮮明に覚えている。 最初は落ち込んだアオイを見て元気づけようと思ってとった行動だったが、俺はこの時、本当にヒーローになるのも悪くないなと本気で思った。 その日から俺は、アオイのヒーローになった。
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