そして、僕はヒーローをやめた。

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ヒーローになったと言っても、テレビと同じように怪物が出てきたりするわけがない。 でもヒーローっていうのは敵と戦うものだ。 小学生の頃はアオイをからかったやつをこらしめた。 中学生の頃はアオイにしつこくつきまとったやつをこらしめた。 高校生の頃はアオイをフッたやつをこらしめた。 「シュウヤがいると、わたし一生彼氏できない気がする」 「なんだよそれ」 「だって、みんな言ってるよ? わたしに何かしたら専属ヒーローが出動してくるって。 もうわたし達高校生なのに」 アオイは笑いながらそう言った。 「アオイが嫌なら、俺はいつでもヒーローなんてやめてやるけどな。 もう随分ガキの頃の話だし……」 俺はこの時、そんなことを言いながらもアオイが俺の存在を疎ましく思いだしたのかと思い内心ヒヤヒヤしていた。 「だーめ! だって、小さい頃からのわたしの夢だもん! 自分を守ってくれるヒーローがいること! 今更いなくなられちゃ困るでしょ」 「……しょうがねぇなあ」 「これからもお願いしますね。 ヒーローさん」 アオイはいつも、笑っていた。 失恋して泣いていても、怪我をして泣いていても、俺が駆けつけるといつも子供の時と同じように笑っていた。 幼馴染によくあると聞く、成長と共に距離が遠くなるだとか、口を聞かなくなりよそよそしくなるだとかは、俺とアオイには無縁のことだった。 小さい頃からずっと俺とアオイの距離は変わらなくて、遠くなることなんてありえなかった。 そして俺はずっと、アオイのことが好きだった。 アオイが俺をどう思ってるかは分からない。 そんなこと今更聞けなかったりもする。 アオイは変わらずずっと戦隊モノの番組が大好きで高校生になっても見ていた。 俺はそんなアオイを見て、いつか俺が本当にこのテレビの向こうでヒーローをやっていたらアオイはどんな反応をするだろう、なんて考えたりしていた。 アオイだけのヒーローじゃなくなるから怒るだろうか? なんて思ったりもしたけど、何度想像してもアオイが嬉しそうに笑ってくれる顔しか思い浮かばなかった。 いつしか本当のヒーローになることが、俺の夢になっていたのだ。
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