そして、僕はヒーローをやめた。

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ヒーローになんてなれなかったんだ。 ガキの頃のまま俺は何も成長していない。 体だけが大きくなって、後は何にもない。 頭の中も、からっぽだった。 喪失感に襲われて、俺は怖くて怖くてたまらなくなった。 専門学校にも行かなくなった。 全ての連絡をシャットダウンした。 部屋からも必要最低限出ない。 両親はそんな俺を見て、最初は何とか元気づけようとしてくれていたが、今では何も言わなくなった。 いつの間にか、俺も20歳になっていた。 大人になったのに、俺はヒーローにはなれなかった。 「ガキの頃の方が、まだマシだったよなぁ……」 今の自分に、そんな言葉を呟きながら失笑する。 そしてアオイは俺がこんな風になってからも毎日のようにベランダから姿を現した。 俺はここずっと、アオイ以外の人間とまともに会話もしていない。 アオイはいつも変わらないテンションのまま、俺に話しかけてくる。 「ねえ、どうしてシュウヤはヒーローをやめちゃったの?」 アオイの第一声は、いつもこれだ。 よく飽きもせず聞いてくるなと思う。 そして俺の答えもいつも同じだ。 「何でやめたかなんて、そんなこと覚えてねえよ」 そう言えばアオイは「変なの」と言って笑う。 あれほど頑なに“アオイのヒーロー”の立ち位置から動かなかった俺が何故いとも簡単にそれを投げ出してしまったのか…… 「本当に、なんでだっけな……」 思い出すことが、出来なかった。
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