そして、僕はヒーローをやめた。

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だらだらと特に何もしない1日は長い。 決まった時間にアオイと話す以外で、俺が1日の中ですることなんてほとんどなかった。 散らかりまくった部屋を片付けもせずひたすらぼーっとしている。 どれくらい、こんな日々を過ごしているのだろうか。 挫折と喪失感というものは恐ろしい。 いつの間にか、俺からアオイ以外のものを全て奪って行ってしまった。 そう、アオイ以外の、ものを。 「シュウヤ? 起きてる? 渡したいものがあるからちょっと部屋開けてもらっていい?」 母さんの声が部屋の向こうから聞こえる。 いつもは勝手に部屋のドアの前に置いてくれているのにわざわざ声をかけてくるのは珍しい。 俺は部屋のドアを開けた。 「シュウヤ……」 「あれ、 母さん痩せた?」 「あ、そう? ダイエット成功かしら」 久しぶりに見た母さんは痩せていて、弱々しく笑っていた。 ダイエットなんて嘘だ。 きっと母さんがこうなったのも俺のせいなんだろう。 「これ……やっぱり、直接渡した方がいいと思ったから」 母さんは封筒を俺に渡す。 「もう、1年経つのよシュウヤ。 あんたが前に進まないと……いつまでもこうしてちゃ報われないわ」 母さんはそれだけ言って、階段を降りてリビングへと戻って行った。 俺は何のことかよくわからず、その封筒を見つめる。 差出人は、隣の家の住所からだ。 「……アオイから? じゃないよな?」 封筒を開けると、中にハガキが入っていた。 【この度 守谷 葵 1周忌にあたる法要を営むことになりました】 ハガキには、そうハッキリと書いてあった。 守谷 葵とはアオイのフルネームだ。 「はは……」 もう片方の手で持っていた封筒が、ぐしゃりと形を歪ませた。 「……なんだ、そういうことか」 俺は、全てを思い出した。 何故こんなに毎日たまらない喪失感に襲われたのかも。 何故俺が、こんな風になってしまったのかも。 全部、全部、1年前のあの日。 アオイが、大学からの帰り道交通事故で死んでしまったからだ。 いつでもどこにいても飛んでいくと言っていた俺が、アオイを守れなかったからだ。
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