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「なるほどねぇ、そんな事情があったのか。…ちなみに、それで何の法案が通ったんだい?」
「結構有名な法案だがな、街とそれ以外の区分が明確にされたのさ。この街もそうだが、地方都市なんかにも周辺のゴーストタウンはあるだろう?そこと中を分け、住人も区別された、市民権はその証だ。」
「あ、それまで区分されてなかったんだっけ?でも、ずっと外暮らしだけど何も変わったようには感じないし、正直どうでもいいことなんだけど。」
「貴様ら外の住人からすればそうだろうな、だが中からすればそうもいかない、貴様らのようなクズと一緒にされるのが嫌だと言う人間は中に腐るほどいる。その気風が高まった中、票集めに必死な人民の連中がその美味しい案件を見逃しはしなかったのさ。」
「だけど、反対した人たちもいたんだね?主に友愛に。」
「そうだな、友愛は全体の意思として”そんな差別思想を具現化したような法案は許さない”と猛反対していたらしい、他のいくつかの小規模な党も便乗して逆らっていたと聞く、しかし、人民からしたらそんな奴らは目障りな事この上なかったと言う訳だな。」
「ほー、まぁそうだろうねぇ、議員なんて自分の利権が第一な人種でしょ?」
「そう言うな、それ以外もいる。………話を戻すが、いくら目障りだろうと小規模な党なんて無視しておけばよかったんだ、だがそれで済まなかったのが一部の過激派、こいつらが裏で手を引き、結果として多数の反対派議員が”不慮の事故”に巻き込まれたわけだ。」
「不慮の事故ねぇ。」
まったく白々しいことだが、善良で間抜けな国民は気付かなかったんだろうか、それとも気づいて黙っていたのか。
「あぁ、事故だ。そのせいで友愛含めたいくつかの党の議員はこの世から退場し、その他の奴らも皆だんまり、結局自分の命が可愛かったんだな、空中分解するのにそう時間は掛からなかったのさ。」
「はー、なんて言うか……醜いねぇ、醜悪、外の住人の方がまだ純粋だよ。」
「そうか、まぁ貴様がどう思おうが知ったことでは無い。私が知っているのは以上だ。」
「あ、そう。…ついでに、オトナシのお父さん、どうやって死んだの?」
「知らん、が、調べれば出てくるだろう、後で教えてやる……約束は守れよ。」
「太っ腹ぁ…守るって。」
彼女はフン、と返事せずに出て行った。
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