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ミカゲ議員はしばらく目元を抑えていたが、程なくして立ち直ると、貴様と話していても何の意味も無い、と言い残して去っていった。
暇つぶしがいなくなって残念がるシドウだが、あのおっさんは重要な情報を残していってくれた、と思考を切り替える。
彼はオトナシの復讐だとは考えていなかった、つまり、彼の存在は認知していないようだ。そうなると、アイザワさんはあの議員とは違う派閥になるのだろう。
彼女の立ち位置はやはり釈然としないままだが、唐突に一つ、最高に面白い仮説が閃いた。
彼女は、オトナシがあの議員を殺す事を狙っているのではないか。
もしくは立ち直れないレベルのスキャンダルを彼に暴かせるか、いずれにせよ最終的に人民の総裁たるあの男を再起不能、または党そのものをぶっ潰すことが目的なのではないか。
そう考えると非常に面白い事になる、オトナシの復讐によってくたばった人民党の長、潰れる最大勢力の党、それによって引き起こされる国家規模の大混乱、それはまさに国家転覆に相応しい舞台ではないか。
となると彼女の正体は某国のエージェント?それとも国際級のテログループ?
突飛な発想だがあながち間違っているとも思えない、日々に退屈するシドウにとっては面白い”仮説”だった。
彼女が来た時に聞いてみよう、と心に決め、シドウは自分のスイッチを切ってスリープモードに転換した。
「おい、起きろ。」
乱暴な口調で起こされたシドウ、体内時計は午後11時を示している。
目の前にはスーツ姿の美女、先ほどまで役人だと決めつけていた彼女だった。
「おはよー、アイザワさん、どしたの、こんな真夜中に。」
「貴様が言ったんだろうが、オトナシ議員の死に方を調べてきた。」
ちょっと驚いた。
「仕事早いね。」
「どうでもいいだろう、そんなことは。
…で、議員の死因だが、自宅の火事で逃げ遅れて死亡、発火の原因はスキャンダルを苦に家に火を付けて自殺だそうだ。……まぁ、これっぽっちも信じちゃいないが。」
「だよねぇ、悪かったね、ありがと。……あ、そうそう、もう一つ聞きたかったんだ、…貴女はエージェント?それともテロリスト?」
「何の妄想だ、それは。」
アイザワさんはボクの予想をバッサリ切ってそのまま退出した。
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