第三幕:救出の準備は迅速に

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 地下通路を歩いて回ること二時間、巨大な扉まで到達した。電子ロックの暗証番号も地図に記載されてたので問題なく戸を開く。  ちなみに、ユヅキの方はばてていた、情けない。  その部屋を見たオトナシは、状況が切迫していると分かっていたが、思わずほう…と呟いた。  部屋を埋め尽くす無数のモニター、さっきの通路を映している物もあれば、何処の部屋か分からないがベッドがある部屋を映した物もあった、きっとモルモットを閉まっておく部屋だろう。  ベッドもキッチンも無く、四六時中モニターを見つめ続けるだけの部屋、その生活性を排除した空間がオトナシには美しく見えたのだ。 「………そういや、これ一人で管理してたんだよな。」  すげぇな、と今は亡き天才マッドサイエンティストに畏敬の念を送りつつも、部屋の中心にあったキーボードに齧りつく。  普段の姿からは想像もつかない指の動きを見せながら、モニターの一つを食い入るように見つめるオトナシ、そのモニターには訳の分からない言葉の羅列が次々と並んでいく。  いい加減耐えかねたのか、ここで人質の少女は果敢に彼に声を掛けた。 「……ち、ちょっと!!そろそろ説明してくれてもいいんじゃないの!!?一体何があったのよ!!?」  その声が届いたのか、オトナシは指を止めて少女の方を振り返り、 「シドウが捕まった。」  その言葉に強い衝撃を受けたのか、少女は一瞬目を見開き、続いて取り繕うような表情になりながら、 「ふ、ふーん、そ、それはよかったわ、これでやっと解放されるのね!!」 「帰れるんならな。」  言葉に詰まる少女、その点を考えていなかったらしい、その様子を尻目にオトナシは言葉を続けた 「それに、帰すはず無いだろう。お前は今回の最重要人物といっても過言ではないからな、シドウを取り返すのにも必要だし、他にも利用価値は山ほどある。」  利用価値、と言われて黙っていられないのがこの少女、 「何よその言い方は!!あたしを道具かなんかだと勘違いしてるの!!?」 「うるさい。」  ドスのきいた声、シドウのそれとは違い地の底から響くような声だった。  すぐさま口を噤んだ少女、ふとシドウの言葉が蘇る。  ”オトナシが本気で怒ったら怒鳴らない。”    身にしみて感じた瞬間だった。
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