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「ちょっと手伝え。」
キーボードに向き直ったオトナシが、画面から目を切らずに少女に呼びかける。
「…何をよ。」
返事はせず、携帯電話と電話番号を走り書きした紙を投げ渡す。
「…これは……携帯電話ってやつ!?……オトナシ、あんたいつの時代の人間なのよ…。」
「こっちじゃ最新だ、いいからさっさとかけろ。」
「ちょっと待って、えーっと……」
たどたどしい手つきで電話番号をプッシュしていくユヅキ、携帯電話など初めて見たに違いない、五百年前には絶滅したと言われていたからな。裏ではひっそりと生産されているが。
「…できたわ!!」
どうだ、と胸を張る少女、電話一つで大げさな。
無視して少女の手から電話を奪い、肩と頬で挟むようにして電話の主を待つ。その間にも指は止めない。
コールが三回なった辺りで相手が電話に出た。
「はいもしもしぃ、こちらアンプルールですぅ、何の御用ですかぁ、オトナシさぁん?」
何故分かるのだろうか、オロチ、恐ろしい奴。
「話が早いな、手ぇ貸せや。」
「高いですよぉ?」
「奇遇だな、こないだ大金が入ったばかりだ、払えるだけ払ってやるから手伝え。」
「大きく出ましたねぇ、まぁ良いですよぉ。あ、それと、シドウさんから伝言ですよぉ。
ゴメン、捕まった、逃走は何とかするから後ヨロシク。
以上でぇす。」
逃走についてはもう定まっているようだが、その先に何を見てるのか。
それと、何気に似てたのが腹が立つ。
「…で、ワタシはどうすればいいですかぁ?」
「そうだな、シドウの様子を探ってきてくれ、それと、ハッカー・クーンに連絡を頼む。」
「かしこまりましたぁ。」
その言葉を残して通話は切れた。
外の街には三種類の人間がいる。
一つは、ただの浮浪者。
もう一つは、徒党を組んで生活するヤクザタイプ。
最後は俺達やオロチのような、特異な能力を生かして少数で生きる者達だ。
そして、今回協力を要請したハッカー・クーンも俺達と同じ部類の人間である。街のどこかでひっそりと生活し、朝から晩まで画面に向かって何かしらの情報を漁っている変人、実際に会ったことは無いがその腕前は有名だ。
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