第三幕:救出の準備は迅速に

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 電話が震える感覚で目覚めたオトナシ、床で爆睡するユヅキを横目で見、確認すると、それはH・Kからのメールだった。内容は依頼したシドウの情報について。  寝てから二時間しか経過してないが、しっかりとまとまった情報だった。捕縛に関してだけと絞ったため量が少ない、というのもあるが。  オロチの物とはまた違う、ネットワーク上のデータ、細かく整理され分類までしてある、芸が細かい。  データをコンピューターに移して確認作業に入る、種類が分けてあったため最低限の取捨選択は可能だった、過去の犯罪歴なんて見ても意味が無い。  データは捕縛の時間や現在の居場所、留置場の地図などから当直のローテーションまで幅広く揃っていた、が、裁判の記録は無い、となると未だに裁判にはかけられていないらしい、処刑直行ではないだろう、そこまで性急では無いはず。  一つ一つ中身を閲覧していると一つ興味深い物があった、面会の履歴だ。  ミカゲ議員が一回、まあこれは予想の範疇なのだが、シドウはアイゼンなる人物と面会している。俺に心当たりは無いのだが、シドウだけが知っている人物ということか?となると交渉の場にいた人物なのだろうか。  考えていても知らないとしか言えないので諦めて次々と確認していく。  そうして最後の一つまで確認し終えた所で計ったかのようにオトナシの電話が鳴った、相手はオロチだった。 「もしもしぃ、そろそろ情報の整理がついた頃でしょうから連絡しましたぁ。」  本当に狙っていたようだ、その勘の良さに舌を巻くオトナシ。 「向こうさんの情報が掴めましたよぉ、明日の午後一〇時丁度、門前道路にて人質と交換するつもりだそうですよぉ、そこにはミカゲ議員も立ち会うそうですぅ、良かったですねぇ。」 「そうか、助かる。」  この情報は入って無かった、未定だったのだろうか。 「そこには腕のいい狙撃手を配備しておく、とのことですからぁ、留意しておいてくださいねぇ?」 「ん、分かった。……なぁ、オロチ、アイゼン、って名前に心当たり有るか?」  正直、期待はしていなかった。さすがのオロチも中の人間までは知らんだろう、と思っていた。だが、 「知ってますよぉ?アイザワさんの名前の一つですねぇ。」  あっさりと答えてのけた、名前の一つ、が気になるが。
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