第四幕:一番の被害者

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 無情にも時間は流れ、気が付けば時計は一八時を指していた。ユヅキはまだ寝ている、床の上なのに大したものだ、表には出して無かったが疲れていたに違いない、誘拐された立場だもんな、気を休めないのは正解だ。  だがまぁ、今回の作戦にあたって、こいつにもちょっとやっとく事がある。起きてちゃ面倒だったし、丁度良かった。  貧弱な十四の娘にゃ外せない強度の鎖を用意する、ここは旧サイボーグの研究所、暴れ出す彼らを締め付けるのに十分な硬さの鎖もたくさんあった。それを用いてきつ過ぎず、それでいて絶対に身動き取れない程度にユヅキを全身縛り上げる。  次に録音機を用意する、最近は便利になったもので豆粒のようなサイズでも音声を録音、再生できる機器が流れてくるようになった。これに人民党の汚職を知る限り片っ端から吹き込む、全部事実かどうかはこの際気にしない。  録音が済んだらこれを鎖にはっつけて、オマケで小型の爆弾も付けておく。周囲50mくらいの人間は爆殺できるだけの威力を持ち、無理に音声を止めようとすれば、または爆弾を解除しようとすれば起爆する仕組みに仕立て上げて準備完了。  次に、オロチに連絡する。 「おい、オロチ、今朝頼んだのはできてるか、できてるよな。」  返事はいつもと変わらず間が抜け、しかし粘ついた声で、 「出来てますよぉ、いやぁ、大変な仕事でしたねぇ。」 「よし、間に合うように取りに行くからいつでも出せるようにしといてくれ。」 「はぁい、わかりましたぁ。」  よし、完璧。  通話を終え、ユヅキが起きる前に運んでしまおうと思ったら彼女は起きた。  当然、縛られていれば黙っていないのがこの少女、 「ちょ、何よこれ!!何であたしが縛られてるのよ!!」  ユヅキはそう叫びながら体をゆするも、鎖はほどけない、そうそうほどけるようには縛って無い。 「ちょっとオトナシ!!あんたの仕業ね!!さっさと解きなさいよ!!」  対照的に冷めきったオトナシ、ため息を一つ、 「解くわけ無いだろ、縛ったの俺だし、黙って縛られてくれんと困るんだよ。」  ますます逆上するユヅキ、うんざりしたオトナシは一つ妙案を思いついた。 「それじゃ、足だけほどいてやるから自分で歩け。」  持ち運び辛そうだったしな、起きたんなら歩かせよう。
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