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それだけだった。だが、ユヅキの堪忍袋の緒が切れた。
「………何よ、これ。何なのよ!!!
これが、父親の言葉なの!!?冗談じゃないわ!!!
親が子に復讐を要求するなんて、そんなの許されないに決まってるじゃないの!!!!」
その激情に晒されても、オトナシは冷静だった。
「そうかもな、だが、昔の俺にはこれが心の拠り所だったんだ。
……親父もきっとこれが愚かなことだと理解してたんだろうさ。そしてその上で、俺らが死なないように目標をくれたんだよ。」
諭すように話すオトナシ、だがユヅキは止まらない。その怒りの矛先は彼へと向けられた。
「ふざけんじゃないわよ!!!こんなのを妄信し続けるあんたもあんただわ!!!これじゃ、あんたはただのピエロじゃないの!!?馬鹿なことだと知っててそのために生きるなんて……あんた、本当に、胸張って生きてるって言えるの!!!?」
涙目になりながらも叫びきったユヅキ、オトナシはここでようやく振り返り、ユヅキが泣いているのを見て少々瞠目した。しかし、すぐさま驚きを消し、代わりに微笑んで告げた。
「お前勘違いしてるぞ、ユヅキ。」
「はぁ!!?何言ってるのよ!!!」
「まず、俺は親父に言われたから復讐をするんじゃない、自分がやりたいからやるんだ。考えてもみろ、親父を殺し、間接的にお袋も殺し、そして俺にシン…弟も殺させた奴がいる、そしてそいつは今も平和な町でのうのうと生きてる。……許せねぇだろ?
…親父には感謝してるよ、自分は殺されると言い残してくれた、おかげで俺はその事実を知り、そいつにその罪を思い知らせてやるために生きることができる、生きる目標が持てるんだからな。」
口元に薄笑いまで浮かべ言いきったオトナシ、その顔を見たユヅキはとうとう彼に恐怖を覚えた。
「………あんた、狂ってるわ………。」
「何を今更。狂ってでもねぇとやってけないんだよ、こんな世界。」
うってかわって吐き捨てるような物言い、
「………あんたがパパを殺せば、きっとあたし達一家も同じようになるわ。そうなったら、あたしはあんたを許さない。」
力強く言い切ったユヅキ、だがオトナシは戸惑う素振りも見せず、
「だからどうした、と言いたいとこだがお前だけは何とかしてやる。外での補助ってのはその提案だ。」
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