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「お前、よく出口が分かったな。」
オロチの運転する車の助手席でそう尋ねる。騒いだユヅキはこいつが延髄を叩いて気絶させ、縛り直してトランクに詰め込んだ。こいつも結構ゲスイよな。
「まぁ、そうですねぇ。ここの地下は軒並みチェック済みですからぁ、後は予想をつけるだけですよぉ、うちの店のなるだけ近くに出てくるだろうなぁ、とは思ってましたしぃ?」
気持ち悪いくらいの正確な予測だ、知らんうちに発信機でも付けられたんじゃなかろうな。
発信機を探して挙動不審に陥ったオトナシをせせら笑うようにオロチは
「安心してくださいよぉ、発信機なんて付けてませんからぁ。」
前を向いたままそう笑った。
「アレは到着しているか?」
アレ、とぼかして言ったにも拘らず、その意味を難なく汲んだオロチ、
「えぇ、来てますよぉ。……それにしてもぉ、面白い事を考えましたねぇ。
…まさかはぐれマシンナーズを乗っ取るなんてぇ、考えてもみませんでしたぁ。」
オロチにしては珍しく、心から驚いたという声音で返事をした。
その様子を見、とうとうこいつを出し抜けたと満足したオトナシは得意げに、
「あぁ、車も貴重だし、どうしたもんかと思ってたんだよ、そしたらちょうど良い所に機械仕掛けの人形がいるじゃねぇか、こりゃもう使うしかねぇよな。ハッカー・クーンには感謝だな。」
「まぁ、あの人もこれが仕事ですしねぇ。」
その時、けたましいサイレンを鳴らしながらマシンナーズの一団が横を通り過ぎていった。そいつらの内の一台が合成音声を叫んでいた。
「誘拐犯ニ告グ!! 本日ノ午後一〇時、人質ノ交換ヲ執リ行ウ!!時間二合ワセテ大門ノ前ノ道路マデ、人質ト共二来ラレタシ!!!
繰リ返ス!!誘拐犯ニ………」
「…だそうですよぉ?」
「知ってるよんなことは。」
オトナシはこれっぽっちも興味をそそられない風に言った。
「おい、オロチ、一つ聞かせろ。お前、何でシドウを売った?」
「売っただなんて人聞きが悪いですねぇ?ワタシはただ場所を提供しただけですよぉ。」
だが、冗談めかして言ったがオトナシはただ黙っていたので、オロチはゆるゆると首を振り、薄ら笑いを浮かべてこういった。
「そっちの方がぁ、面白そうだったから、ですよぉ。」
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