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一方、こちらも簀巻きにされたシドウ。護送車の荷台に投げ込まれ、寝そべったまま窓の無い車の旅を満喫していた。
「…ねぇ、アイザワさん、暇だしお話しようよ。」
…訂正、やはり暇だったらしい。
シドウの見張りのために一緒に荷台に乗る羽目になったアイザワは憮然としながらシドウに言い返した。
「断る。私には話す理由が無い。」
「えー良いじゃん、どうせあなたも暇でしょ?ボク、まだまだ聞きたいことはあるんだよねー。」
突っぱねたのを無視され、アイザワは苛立ちを隠そうともせず舌打ちを一つ。
「勝手な奴が。」
そう吐き捨てたアイザワに対し、シドウは口の端を上げて、
「殺し屋だもの、自分勝手で当然だよ。」
開き直ってそう言い切った。たちが悪い。
「……ねぇ、アイザワさん、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
暇そうにしていた姿から一転、声のトーンを落とし、真剣そうな表情でそう尋ねたシドウ。鎖に縛られているのがシュールだ。
「……何のことだ?」
理解できていない様子のアイザワ、シドウにはそれが演技に見えたのか、
「惚けないでよ、あなた、本当はどこの所属なの?政府の役人じゃないでしょ?」
そう問うた一瞬、ほんの一瞬だけアイザワの顔から表情が抜け落ちた。だが、それを見逃すシドウではない、彼女は自分の疑念を確信に変えた。
「……私は貴様の言う政府の役人だよ、これを見ろ。」
そう言い、懐から手帳を取り出すアイザワ、しかしシドウにはそれが何か分からない。生まれてこのかた一度しか中に入った経験が無い、どうして中の役人の証明が分かるだろうか。
納得しないシドウの様子を見たアイザワは、少し困った顔をしながら再び懐に手を突っ込んだ。
「あ、もーいいよ。それがきっと証明になるんだろうし。」
探し始めてからいらないと言う苛立ちコンボを叩き込んだシドウ、これが無意識だから恐ろしい。
当然ながら青筋を立てたアイザワ、不機嫌度が跳ね上がったのが目で見ても分かる。
「……政府の役人ではあるのか、じゃあ、やっぱり某国かテロリストからの回し者で諜報のために政府に入ったってとこなのかな?二ホン出身でもそんなのに入てる人もいるんだねぇ。」
「…おい、いい加減にしろ。」
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