第一幕:危険な依頼は唐突に

2/15
前へ
/85ページ
次へ
 シドウの朝は早い。  センサーによって日の出と同時に覚醒。  そのままリビングへと向かい、購読している新聞を手に朝食を作る。  ちなみに新聞は正規の物ではなく、闇から回ってきたものだ。  昨日珍しく卵が手に入ったから……スクランブルエッグかな。  いっつも黒パンだけだもんね。  寝ている相方の分も作っておき、愛用のパーカーに着替える。  そろそろ洗濯しないといけないな、なんて考えるも、残念ながらそんな時間的余裕は今の生活には無い。  最寄りのコインランドリーまで100キロはある、近くまで行く用事があれば行ってもいいかな。  新聞の方には特に目立ったニュースは無かった。  だが、新聞と一緒に手紙が一通送られてきた。  知り合いから、依頼、と言うよりも紹介を頼まれたから尋ねてくれ、との事だった。  殺し屋としてそれなりに名の知れた二人組ではあるが、徹底した情報統制を行っているため自分たちの存在について深く知っているのは裏世界の中でも極々一部の者たちだけだ。  そのため、仕事を頼む場合にはまずそいつらにコンタクトをとる必要がある。  そいつら自身も相当な立場に居る場合が多いのだが。  依頼を受ける最低ラインは前金500、成功報酬1000。  これはこの仕事の人間に払うにしては破格の仕事料だ。  自分たちも腕を上げ、これだけ稼げるようになったのも最近の話だ。  だが、正直これでもまだ足りない、自分達には金が必要なのだ。  街には、市民権、というものがある。  それを得るためには、生まれが街か、もしくは外部からなら一人頭百億イェンを払わなければならない、なんていうふざけた権利だ。  これ無しで街に入ると、即刻捕まって豚箱一直線、シドウ達なら裁判も省略で首に縄がかかるかもしれない。  だが、外部の人間に百億稼げなんていうのが土台無理な話、つまりこれは外の人間を中にいれないようにするための腐った罠なのだ。  だが、オトナシは本気でそれを狙っている。  彼女も理由は知らないが、何やら浅からぬ因縁があるらしい。    シドウ自身はそんなものには毛頭興味が無い。  だが、彼と同じく金を必要とする理由はあるのだ。  そして効率よく稼ぐために彼と組んでいる。  彼を気に入っているのも事実だが。 
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加