第3章 ひーな先輩と僕 ~あなたの笑顔が見たいから~

21/21
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/496ページ
「ところでタマちゃん……さっきから口数少なくなぁい?」 「そ、そんなことないですよ? ……ふぅぅぅ」 「顔色悪いよぉ? 具合悪い?」 「べつに……うぷっ」 「え? ちょ、やだぁ! また酔ったの!?」 「……こぽぉ」 「うぎゃぁぁぁああああ! 今ちょっと中身出なかったぁ!? 待ってて、鞄からすぐにビニール袋出すからぁ!」 「……も、もうダメだ。母さん、孫の顔を見せてあげられなくてごめんなさい……」 「死んじゃダメぇぇぇぇぇ!」 「げ、限界です……ぅ!」 「間に合ったぁ! 大丈夫ぅ? 乗り物酔いのときは遠くの景色を見て――」 「あ、出るぅぅ――ゲボ※☆◆○★◇♯●※■☆◆♯○※■ゴボォルァァァ!」  びちゃびちゃびちゃびちゃ。  はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。  の、喉が焼けるように熱い。口の中は酸っぱいし、最悪だ。  でも一番最悪なのは……目の前のこの人だろうな。 「うぅ、最低だよぅ……ばっちり見ちゃったよぅ……お昼ご飯、絶対に麺類だよぉ……」  はい。ナポリタンです。  ひーな先輩。なんていうか、ほんとすまんかった……。  酸味のある臭いが充満したゴンドラ内で、僕は床に頭を何度もこすりつけて謝罪したのだった。  この事件をきっかけに、僕のあだ名のレパートリーに「吐瀉王」が加わったんだけど、それはまた別の話……。
/496ページ

最初のコメントを投稿しよう!