二月の朝

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 ふと、佐奈子の顔が浮かんだ。  佐奈子はどんなドレスを着ていただろう。  白いドレスだったと思う。お色直しを一回していたから、あるいは違う色のドレスも着ていたか。  もう十三年も前の話だ。式の詳細なんて思い出せるはずもない。段取りに招待者の決定……準備期間の大変さだけはわりあい思い出せるのだけど。 十年以上も一緒に暮らしていれば、もうお互いがお互いにとっての生活の一部になる。ともすれば無意識になるくらいに。気を使わなくてもいい気楽さはあるが、流行りの歌で歌い上げられるような恋心やときめきとはまったくの無縁だ。  毎日、考えなきゃいけないことはいくらでもある。  誰か一人を想い続けるには、人は忙しすぎるのかもしれない。
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