天窓の追想

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”教育”というのは、もちろん読み書きを覚え下町訛りを治したり、ピアノの演奏やワルツの足運びを習ったりすることではない。 娼館に来た日の夜、少女は教育係に純潔の証を貫かれた。教育係は少年だったが、彼もここで体を売っているらしかった。 男をたらし込む手練手管と、この世のものとは思えないような肉体の悦びを、毎晩のように刻み込まれた。 誇りと尊厳を切り刻まれた少女は、やがて抵抗することを放棄する。 代わりに、天窓を眺めることにした。 目を凝らして天窓から星粒を見つめていると、そこに自身の魂がすうっと吸い込まれていって、穢れのない世界に運んでくれる。 男たちに欲望を叩きつけられている間、そんな夢想をしていた。 するとエメラルドの瞳は無垢な乙女のように澄み渡っていき、処女性を高めていく。 皮肉なことに、それが男たちを惹きつけて止まないものにしていくのであった。
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