天窓の追想

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少女がまた少し大人に近づいた頃、神はようやく可哀想な少女に手を差し伸べる。 いや、悪魔だろうか。 娼館は潰れたのである。 女主人の死によって。 女主人は生まれたままの姿で、ぶよぶよした白い四肢をベッドに投げ出し横たわっていた。 あちこちにナイフの刺し傷があり、細く血の川を流していた。 あまりある脂肪が中々ナイフを通さなかったと、教育係の少年は供述しているという。 娼婦たちは逃げ出したが、体を売る以外に手っ取り早く金を稼ぐ方法を知らなかった。 ほどなくして、彼女たちは酒場の入り口や路地裏に立つことになる。そして、劣悪な環境だったのにもかかわらず、雨風のしのげた生活を恋しく思うのである。 逃げ遅れた娼婦たちは、警察に連れて行かれたり人買いや斡旋業者たちに別の娼館へ売られたりした。 少女は後者だったが、他の娼婦たちと少し違っていた。 少女は、とある紳士に身請けされたのである。
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