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耳鳴りがするほど静かな夜、少女は居心地のいい住処を飛び出した。
紳士に何も告げず、夜に紛れる黒いローブと薄い寝巻き一枚だけで。
途中でならず者や警察官に捕まらなかったのは奇跡だ。
少女が息急き切って向かったのは、郊外にある娼館だ。
娼館には、風雪にさらされボロボロになった売り出し中の張り紙が貼られていた。
中に入れば埃がべったりと足の裏につき、小さな虫がそこかしこに這っている。
少女はそんなことには気にもとめず、蜘蛛の巣だらけになりながら二階へ上がる。
ベッドも、それを仕切っていたカーテンもすべて取り払われており、広い空間に少女の足音だけが反響した。
少女は美しい銀の髪に埃が絡まるのも厭わず床に仰向けになる。
祈るような気持ちで、じっと目を凝らす。
すると、ちかりちかりと光の粒が瞬き始めた。まずは一つ。そして、二つ三つが十に。十が百にーーー
やがて天窓いっぱいに小さな星空が広がっていた。
ちっぽけな星空は、ただそこにあるだけだ。
しかし星たちの輝きは天から降り注ぐマナのごとく少女を満たしていき、エメラルドの瞳からは涙が溢れた。
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