第1章

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「お前さー、昨日のお笑い見た?」 「あー、見た見た!また逸材現れたよな!」 今日も、このクラスは、休み時間を喧騒に包む。 あれこれのテレビ番組の話、昨日あった話、趣味の話、好きな人の話……。よく、毎日会話が続くものだと思う。 そんなことを思う僕は、今日も一人、後ろの席で読書に耽る。 僕の列の最前列にいる、彼女と同じように。 名前は知ってる、薄葉 雅(うすのは みやび)。 前髪を揃えたショートカットの可愛らしい子。だけど、誰に話しかけられても言葉を返さないから、クラスでは浮いた存在。僕も話したことはない。 かくいう僕も、地味な外見をしてるのに加え、話下手だから、クラスでは浮いているというより、空気みたいに見えてない感じ。 だから授業中に寝ていても、教師にめったにバレない。これを得と言えるのかどうかは分からないけど。 休み時間は喧騒に包まれ、授業中は嘘のように静まり返り、休み時間になるとまた喧騒……というように、今日も繰り返される日常風景。 春の日差しが、窓からこぼれ落ちて、爽やかな気分になる。そんな5月の中旬の日。
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