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「じゃ、また明日な~!」
「おう、部活頑張れよー」
全ての授業が終わり、クラスメイト達が帰る支度を始める。
どこかざわついた独特の雰囲気でも、僕は変わらずに視線を本に落とす。話しかける人もいない。ある意味で、集中ができる。
「雅さん、今日も教室に残るの?」
女生徒の問いに、コクンと頷く雅さん。
「じゃあ、鍵閉めるのお願いね。私、部活行くから」
再び雅さんがコクンと頷くと、女生徒はパタパタと去っていく。
ってか、僕いるのに、僕には聞かないのか。別にいいけど。
「………………」
「………………」
窓から吹き込む、春の匂いが染みついた風が、教室の中に流れ込む。
喧騒に包まれていた教室は、今は鉛筆を走らせる音と、本をめくる音しかしない。
その間が、どれほど続いただろう。
イスを引く音が響くと同時に、雅さんが辺りをキョロキョロしながら立ち上がる。
そして、僕以外に誰もいないのが分かると、ノートと筆記用具を持って、僕の隣の席に座った。
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