第1章

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僕は本を読むのをやめ、彼女の方を見る。 雅さんは、僕に向かって、ノートを差し出していた。 受け取り、しおりが挟んでいるページをめくる。 “昨日、何していましたか?差し支えなければ、教えてください” 丁寧に書かれたその文字の下に、僕は文字を書いて渡した。 “生きていました” 僕の答えを見て、彼女はプッと吹きだす。いつも真面目な顔してるから、笑う彼女の顔は、いつ見ても新鮮だ。 “ふざけないでくださいよ。何してたんですか?” “音楽番組を見て、音楽に目覚めてた。ギターを買おうか、真剣に悩み中” “そんな安易な……。でも、隼人くんらしいですね” “褒めてる?” “さあ、どうでしょう?” イタズラに笑う雅さん。 放課後のこの時間は、学校で僕が僕らしくいれる時間であり、彼女が彼女らしくいれる時間。 人と普通に話すのを目標にして設けられた時間。 二人だけの、秘密の時間。 そして、この交換日記のような、会話練習ノートは、僕らの秘密の趣味に欠かせない大切なもの。
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