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「お~い、歳。」
近藤が話しながら部屋に入ろうとすると土方は口に人差し指を立てる。
「ん?なんだ?っっっ、うおっ?!小林くん?!」
「近藤さん、ウルセぇ。起きちまうだろうが。」
「す、すまん。」
慌てて両手で口を塞ぎ、すすすと土方の方へと足を進める。
「な、何で小林くんが歳の部屋で寝てるんだ?」
「あぁ、そいつが寝れてねぇみたいだから無理矢理寝かせたところだ。」
「寝れてない?」
「あぁ、池田屋があってから夜うなされてるのをよく聞く。」
「そう、か。」
近藤は夏の目の下の隈を見て顔を曇らせる。
「小林くんには酷なことを経験させてしまったな。」
「…仕方ねぇよ。ここにいたら誰もが通る道だ。俺たちにできるのはこいつが自分で乗り越えられるのを手助けしてやるくらいだろ。」
「そうだな。……それにしても歳。小林くんにはずいぶん優しいじゃないか。なんだ?彼女のこと気になり始めたりしたのか?」
うりうりと肘で土方を小突く近藤。
「ハァ?!勝ちゃん、ふざけないでくれ。今はこの新選組の事で手一杯だ。女に現を抜かしてる暇はねぇ。そんなことより、これからのことなんだが……」
無理矢理話を終わらせた土方にやれやれと肩をすくめる近藤。
(歳。好いた人が出来るってのは良いことだぞ。お前にも早くそれが分かるといいが。)
江戸に残してきた妻子のことを考える。
「おい、近藤さん、聞いてんのか?」
「ん、おぉ。聞いてるとも。」
怪訝な顔をした土方にそう答え顔を引き締める近藤。
そうして2人の話し合いは夜遅くまで続いた。
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