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僕は大学生の時、本屋でバイトをしていた。
バイト中に「サザエボン」の話題になった事がある。
サザエさんの「サザエ」と、バカボンの「ボン」とをくっつけた、両者をミックスさせたような風体のキャラだ。
女子の先輩方は、楽しげに「かわいいよねーサザエボン!」みたいな会話をしていた。
そこに僕が割って入った時の一言。
「バカさんがかわいそう過ぎますよね!」
……
完全に「何言ってんのこいつ?」という空気になった。
「あ、なんでもないです。なんでも」
そう言って、冷や汗をかきながら、あっさり撤退する僕。当時の精神ダメージは半端無いものだった。今はもう慣れたけど。
この場を借りて説明すると、要は、コンビ芸人の「売れない方」の悲哀を想像してしまったわけだ。
「バカボン」がお笑いコンビ2人組だったと仮定する。そのうち面白い方の「ボン」が、芸人シャッフルで呼び出される。
「サザエさん」も、お笑いコンビ2人組だったと仮定する。そのうち面白い方の「サザエ」が、芸人シャッフルで呼び出される。
芸人シャッフルで呼び出された「サザエ」と「ボン」とがコンビを組んだ「サザエボン」が、本屋のバイト女子大生達に、かわいいかわいいと、もてはやされる。
その裏で、取り残されてしまった「さん」と「バカ」との二人の心境を、僕は想像してしまった。
仮にこの「取り残された二人」でコンビを組んでも「バカさん」だ。なんという酷い芸名。
当然ながら、この脳内妄想は、誰にも正確に伝わる事なく、今の今まで寝かされ続けていた。
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