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「コウ、会いたかった。死んじゃったのかと思った!」
蚕のように布団にくるまる僕の名(?)を、この白い箱の中で異様に映える黒い髪を持った女の子が泣きながら呼んでいた。
そばにあるのは点滴。
消毒液のにおい。
「もう目を覚まさないのかと思った……!」
どうして泣いているの?
君は、誰?
何もわからない。
瞬きを繰り返していると、
「…………」
女の子は一瞬目を見開いたあと、酷く悲しそうな顔をした。
何でそんな顔をするんだろう。
どこかで、見たことがある気もするんだけど。
「……もういいよ。人違いだったね。ごめん」
女の子は少し俯いて僕のベッド脇にあった椅子から立ち上がる。
何かが彼女を傷付けてしまったらしい。きっと僕の言葉。行動。
でも、何が?
「ごめんね。どこかで、会ったことが……きっとあるんだよね?」
表情が動かない。きっと伝えたいことは伝わってない。
「お気遣いありがとう。でも気にしないで」
白い箱にひとつだけある扉から出ていってしまう。僕が追いかける術はない。たぶん、理由も、ない。
からっぽの白い箱に、さらにからっぽが満ちていく。
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