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めずらしくクニがなにかいいにくそうにしている。
「なんだよ、はっきりいえ」
クニがなにをいいたいのかは、その場にいる4人全員がわかっていた。夕食を終えたあと妙に沈んだ雰囲気なのは、そのせいでもある。
「……この先も訓練のたびに全滅させられるんだろ。気が滅入るよな。毎回自分の死で終わる訓練かよ」
ジョージがパンッと手を叩いて軽快にいう。
「気にするな。『須佐乃男』の実戦のときも敵は圧倒的な兵力で攻めてくる。そのときに心が折れないための心理的な訓練でもあるんだろう。なにも毎回全滅という訳ではないはずだ。こちらの装備もグレードアップしていくはずだからね。7名でも十分に戦えるようになる日がくる」
テルが皮肉に口先をとがらせていった。
「お偉がたもおれたちに負け癖をつけて、本土防衛戦に送りだしたくはないだろうからな」
タツオは鉄格子のはまった窓に目をやった。夜の北不二演習場が黒々と静まり返っている。日乃元本土上陸軍は、エウロペと氾(はん)の連合軍だ。先進的な武器と軍事テクノロジーはエウロペが提供し、主力の歩兵は氾帝国からくるだろう。氾の戦いかたは兵の命を重くは見ない果てしない消耗戦を基本にしていた。無尽蔵に近い兵士の命を武器とする飽和戦術だった。いくら損害と戦死者が出ようと、最後には戦いに勝つ。世界中から野蛮だと恐れられる戦法だった。
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